谿声山色 9 「 逆水の波浪たかく天をうつ 」
- 2021/04/30
- 11:19
正法眼蔵 谿声山色 9
「 逆水の波浪たかく天をうつ 」
この居士の悟道せし夜は
そのさきの日、総禅師と
無情説法話を参問せしなり
( 東坡居士 [ 1037 - 1101 ] が
( 谿声山色を聴いた夜
( そのすこし前、照覚常総禅師から
( 「 無情説法話 」
( について説明を受けていました
禅師の言下に
翻身 hon-sin の儀
いまだしといへども
谿声のきこゆるところは
逆水の波浪たかく天をうつものなり
( 禅師からその説明を受けても
( 東坡居士に特段変化はありませんでした
( しかし谿声山色を聴いたその夜
( 逆巻く波が天を高く打つよう聞こえたのです

しかあれば、いま
谿声の居士をおどろかす
谿声なりとやせん
照覚 syo-gaku の流瀉 ryu-sya なりとやせん
( それは谿声山色が
( 東坡居士に語りかけたのでしょうか
( それとも、禅師の説法の
( 余韻だったのでしょうか
うたがふらくは
照覚の無情説法話
ひびきいまだやまず
ひそかに谿流の
よるの声にみだれいる
( 照覚常総禅師の
( 無情説法話のイメージが
( 強く印象に残り
( それが渓流の夜の声に重なり
( そう感じられたのかも知れません
たれかこれ
一升なりと辨肯 ben-ko せん
一海なりと朝宗 tyo-so せん
( 谿声山色無情説法
( それが何故聞こえるか
( それを特定するのは無理です
畢竟 hi-kyo じていはく
居士の悟道するか
山水の悟道するか
たれの明眼 mei-gen あらんか
長舌相 tyo-zeso 清浄身 syozyo-sin を
急著眼 kyu-zyaku-gan せざらん
( 突き詰めてみれば
( その夜の静かな坐
( その居士の威儀骨格
( それが谿声山色の扉を開いたのか
( それとも谿声山色が
( 居士の威儀威風を喜び
( 己を明かし祝福したのか
( どのような因縁で、谿声山色が
( その清浄身 syozyo-sin を明かしたのか
( 知ること能わずです
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