行 持 下 「 慚 愧 」
- 2020/10/11
- 08:16
正法眼蔵 行 持 下
「 慚 愧 」
正法にあふ
今日のわれらを
ねがふべし
正法にあふて
身命をすてざるわれらを
慚愧 zan-ki せん
はづべくは、この道理をはづべきなり
( 身動き出来ない存在
( それを救済解放してあげられる
( その貴重な正法、すなわち面壁坐禅
( これに今日出会えた事は、奇跡的なことです
( 出会えたのに、出来るのに
( してあげない、という事がありえるでしょうか

( 呪いをかけられたように
( 身動き出来ない存在があります
( 見る事能わずですが、感じる事は出来ます
( こちらが悪かったのもありますが
( いきなりクラクションとか鳴らされると
( ドキィっとして、カっと怒りが湧き立つとか
( ばかばかしいと思っても
( その怒りは、消えて ・・ と思っても
( すぐには、消えてくれません

( ワーグナーの作品
( 『 パルジファル 』 ( 全3幕 )
( を見てみます
( 若く新しい王アンフォルタスは
( 魔術師クリングゾルの征伐へ赴きます
( でもクリングゾルがさしむけた謎の美女に誘惑され
( 聖槍 sei-so を奪い取られたうえ
( その聖槍で脇腹に傷を負ってしまいます
( それ以来、アンフォルタス王の傷口は癒えず
( 日夜その苦痛に苛まれます
( そのようなアンフォルタス王に、ある日、神託が下ります
( 「 同情(共苦) によって叡智に至る
神に選ばれた純粋な愚か者を待つように 」
( その者が聖盃の城に救いをもたらすと

( 同情(共苦) によって叡智に至る
( これはワーグナーの言葉ですが
( 達磨大師の面壁坐禅とは、何をなさってるのか
( この言葉で近づけるかと思われます
( 常識的には坐禅の姿は
( 何を不自然な事をしてるのだろう
( と映ります
( 半寝瞑想でもなく、思慮の時間でもない
( 駅のホームにいるように
( ごく当たり前で、姿勢が坐禅の姿です

( ワーグナーの 『 パルジファル 』 では
( パルジファルは聖槍 sei-so を片手で掴み
( 頭上にかざし十字の印を切ります
( 十字の印を切るとは
( 何を、なさっているのでしょうか
( 達磨大師は面壁坐禅において
( 外に十字を切るのでなく
( 身中に十字を切られておられます
( パルジファルの聖槍の十字も
( 面壁坐禅の身中の十字も
( その十字は外へ放射しているのではなく
( 四本の矢はすべて、内へ向いてるとします

( 内へ向いた四本の矢
( それは中心点に帰結します
( そこには、誰がいるでしょうか
( そこにいるのは、私自身に他なりません
( 「 同情(共苦) によって叡智に至る 」
( そこらじゅうに、消える事が出来ない
( 苦悩苦痛が散乱してるとします
( それらが、中心へ私へ集まって来ます
( それが十字の内容と言えるかも知れません
( 「 同情(共苦) によって ・・ 」 です
( ホラー映画を何本も同時に見るようで
( 精神錯乱しちゃいませんか ?
( しかし、文章はそこで終わらず
( 「 同情(共苦) によって叡智に至る 」
( その十字が叡智に至ると書かれています

( 内十字を切るとは
( どう言うことでしょうか
( 苦悩がすべてが私に集まって来ます
( 同情(共苦) です
( これって、その事自体が
( 「 私 」 が機能したとも言えないでしょうか

( 自分は日本語で思考してます
( 様々の言語で 「 一人称 」 があると思います
( 日本語なら
( 「 わたし 」 「 自分」 「 ぼ く 」 「 われ 」
( そこで、その中で別格の一人称として
( 「 私 」 を使おうと思います
( この 「 私 」 は、人間関係の中のそれでなく
( 自分が自分を指し示す一人称とします
( 自分が自分を指し示すとは
( どう言うことでしょうか
( これがそれが、私自身なのだ
( あなた自身なのだ、とならざるを得ません
( 「 同情(共苦) によって ・・ 」 です
( これってとんでもない一人称です
( 苦悩は避ける、他へ押し付ける、見捨てる
( その反対です

( この 「 私 」 が機能する時
( 心に内十字が、切られています
( そしてこの一人称は別格の一人称です
( 「 同情(共苦) によって叡智に至る 」
( この文章を逆に読んでみます
( 叡智には、同情(共苦) が可能だ
( とも読めます
( そしてまた順に読めば
( 同情(共苦)によってのみ、叡智へ至れる
( そう読むことが出来ます

( 何をなされておられるのですか?
( な、達磨大師の面壁坐禅
( 内十字が、切られてます
( 別格の 「 私 」 が機能してます
( 同情(共苦) がなされています
( = 叡智がそこに機能しておられる
( と、言えるのではないでしょうか

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